研究室紹介

 

ごあいさつ

星野真一 教授
教授 星野 真一

 1953年WatsonとCrickによって『DNA二重らせん構造』が発見されたそのすぐ翌年にRNA Tie Clubが結成されました。 理論物理学者のGamovが主催して、WatsonとCrick、Brennerをはじめそうそうたるメンバーによって構成されていました。 正会員は20名で、20種類のアミノ酸に対応してコードネームがつけられ、WatsonがPro、CrickがTyr、BrennerがValと呼ばれていました。 また、核酸を構成する4種のヌクレオチドに対応して名誉会員が4名選ばれ、全24名の会員のうち8名(3分の1)がノーベル賞受賞者という驚異的な頭脳集団でした。 といっても、私が生まれたのは遺伝暗号(トリプレットコドン)の概念が実験的に証明された年(1961年)ですから、 実際には書物の上でしか知りませが、当時のRNA研究がどれだけ盛んに行なわれていたかを伺い知ることができます。

 私がRNAと関わるようになったきっかけは1989年に東京大学薬学部宇井理生教授のもとで翻訳終結因子eRF3の遺伝子を単離したことにあります。 当時は翻訳終結因子であることがまだわからず、細胞周期のG1-S移行を制御する新規のGTP結合蛋白質として同定しました。 その後2003年に翻訳終結がmRNA分解のトリガーとして機能していることを発見し、 2007年mRNA分解開始の分子機構に辿りつくごく最近に至るまで、一貫してRNAの研究に携わってきました。

 私がこの名古屋市立大学に赴任したのが2005年で、その節目に新しい研究室の名前を遺伝情報であるRNAに因んで遺伝情報学分野としました。 2003年ヒトゲノムの完全解読以降、RNA研究は再び急速な勢いで進展しつつあります。 RNA Tie Clubが結成され蛋白質生合成におけるRNA研究がさかんに行なわれた1960-70年代、 選択的スプライシングやリボザイムの研究が進展した1980年代以来のRNA研究の第3の波が来ているとも言われています。 私たちはRNA代謝研究を通して、さまざまな生命現象の謎を解明し、 最終的に疾患治療に応用することを目標に、薬学におけるRNA研究の重要性を発信していけたらと考えています。

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