名古屋市立大学大学院薬学研究科・薬学部English SAMPLE COMPANY
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PAD活性を検出するためのシトルリン検出蛍光プローブの開発

私たちの体を形成しているタンパク質は、DNAの遺伝情報をもとに、転写と翻訳の2つの過程を経て合成されています。しかし、合成されたタンパク質は多くの場合さらに様々な化学反応(翻訳後修飾、Post-translational modification)により変化することでタンパク質の機能の多様性を生みだしています。病気の状態では翻訳後修飾に変化がみられることがあり、がんや神経変性疾患、心疾患の発症にタンパク質の翻訳後修飾が関与していることが知られています。このため、疾患を理解し、治療薬を開発するために、翻訳後修飾の変化を知る分析手法の開発は非常に重要です。 私たちは、数ある翻訳後修飾の中でもタンパク質アルギニン残基のシトルリン化に着目しました。シトルリン化は脱イミノ化とも呼ばれ、修飾の前後で分子の大きさはほとんど変化しませんが、アルギニン由来の正電荷が消失し疎水性が上昇することが特徴です。正電荷をもつアルギニンが中性のシトルリンになることに伴って、タンパク質の機能に変化が生じます。生体内にはアルギニンのシトルリン化を担う酵素があり、代表的なものがPADと呼ばれるタンパク質です。PADによるシトルリン化は、がんや多発性硬化症、関節リウマチなどの疾患との関連が指摘されていますが、その詳細は完全には理解されていません。そこで私たちは、PADによって引き起こされるシトルリン化の変化を検出する方法の開発に取り組みました。
酸性条件下でシトルリンとのみ反応するフェニルグリオキサールの化学反応性を利用し、反応後に蛍光分子の電子状態が変化することで蛍光強度が上昇する試薬(蛍光プローブ)を開発しました。この試薬は、シトルリンと反応前は蛍光を示しませんが、反応後には蛍光を示す化合物へと変換されることが確認されました。シトルリンの産生量はPADの活性を反映していることから、この試薬は蛍光増大を指標としてPAD活性を検出することが可能です。今後、開発した蛍光プローブを用いて大規模なケミカルスクリーニングを実施することで、新しい作用機序に基づく疾患治療薬が見出されることが期待されます。

[発表論文]
Bioorg. Med. Chem. Lett., 28, 969-973 (2018).
Bioorg. Med. Chem. Lett., 29, 923-928 (2019).

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