刺激応答性リポソーム製剤を用いた各種トリガーリリース戦略

 薬物を効率的に送達する概念の一つにトリガーリリースがあります。これは、薬物を含有・結合している粒子に何らかの刺激(熱、超音波、光、pH、酵素反応など)を与え、がんなどの疾患部位に到達した粒子から薬物を放出することで、最大限の治療効果と最小限の副作用を得ることを目的とした戦略のことです。これまでに我々は、生体親和性の高いリン脂質から構成されている脂質ナノカプセルであるリポソームに焦点をあて、刺激応答性リポソームの開発を行ってきました。リポソーム膜に特殊なPEG系界面活性剤を含有させることで、熱刺激に応答してリポソーム膜表面の構造が変化し、リポソームから薬物を高濃度かつ大量に放出できるような温熱感受性リポソームの開発を行いました(Tagami et al., JPS 2015)。また、このリポソームは、がんに高発現しているリン脂質分解酵素(ホスホリパーゼA2、PLA2)に高感度に応答して薬物を放出する性質を持つことから、温度・酵素の2つの刺激に応答して薬物を放出できる刺激応答性のリポソームであることを報告しました(Tagami et al., IJP 2017)。

 光刺激応答性リポソームに関しては、光増感剤と抗がん剤をリポソーム内に共封入し、光(近赤外線レーザー)に応答して薬物を放出できるような、光刺激応答性リポソームを開発し、光線力学療法との併用を目指したリポソームを調製しました(Fuse et al., IJP 2018)。温熱感受性リポソームの周りをナノ構造の金膜で部分的に被覆することにより、近赤外レーザーを吸収して発熱することで薬物を放出できるような機能性リポソームの作製に成功しました(Koga et al., CS 2021。下図にコンセプト図(https://doi.org/10.1016/j.colsurfa.2021.127038)。

2022年04月26日