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安心して参加頂くために

がん患者さんの新しい治療薬として用いられるようになった分子標的薬は、既存の抗がん薬に比べて高い効果を有し、副作用も少ないことが期待されています。しかし、実際に投与してみるまで効果がわからないことも多く、稀に重篤な副作用が現れる患者さんも経験します。私たちは、分子標的薬をより安全で効果的に使用したいと考えています。そこで、薬剤の効果と副作用を予め予測できるような簡便な検査法の開発を目指しています。将来、治療開始前の採血だけで薬の効果や副作用を予測できるような検査(バイオマーカー検査)が可能になれば、患者さんも安心して分子標的薬治療を受けられる個別化医療の時代が到来すると期待しています。

そこで私どもの研究班では、下記のような研究への参加をお願いさせていただいております。

1.抗CCR4抗体(モガムリズマブ)療法を受けた進行・再発がん患者さんにおける臨床効果と副作用を予測するゲノムバイオマーカーの検討

モガムリズマブ(ポテリジオ注)は、免疫を抑制するTリンパ球(制御性T細胞)に強く発現しているケモカイン受容体(CCR4)に対する抗体薬です。固形がんの治療として医師主導治験で開発が行われています。この場合は、モガムリズマブが制御性T細胞を攻撃して患者さんの体内の免疫の抑制状態を解除することによって、がん細胞を攻撃する自らのTリンパ球(細胞傷害性T細胞)の働きを強めようとする治療です。制御性T細胞を攻撃することによって、がん細胞ではない自らの体を攻撃してしまうようなT細胞が現れる患者さんがおみえになり、時に重篤な皮膚障害(スティーブンス・ジョンソン症候群)や呼吸が苦しくなる間質性肺炎などの副作用が現れることがあります。この研究では、がんの縮小する効果とともにこれらの副作用を予測するような検査法を開発することが目的です。

2.抗CCR4抗体(モガムリズマブ)療法を受けた成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者さんにおける臨床効果と副作用を予測するゲノムバイオマーカーの検討

成人T細胞性白血病・リンパ腫は生後間もない時期にHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス-1)というウイルスに感染した患者さんが数十年後に発症する白血病やリンパ腫で、通常の抗がん薬治療だけでは治癒の得られない疾患です。ATLL細胞の表面にはCCR4が強く発現しており、モガムリズマブ(ポテリジオ注)の有効性が示されています。抗がん薬治療が無効になった患者さんの約半数に対してモガムリズマブが有効であることがわかりました。しかし、約2割の患者さんで広範な皮疹が発現し、2〜3%の患者さんではスティーブンス・ジョンソン症候群または中毒性表皮壊死融解症と呼ばれる重篤な皮膚障害が現れることが問題となっています。他にも間質性肺炎をはじめとした自己免疫の誘導による重い副作用も報告されています。この研究では、ATLLに対する治療効果とともにこれらの副作用を予測するような検査法を開発することが目的です。

抗CCR4抗体(モガムリズマブ)療法を受けた成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者さんにおける臨床効果と副作用を予測するゲノムバイオマーカーの検討:1

抗CCR4抗体(モガムリズマブ)療法を受けた成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者さんにおける臨床効果と副作用を予測するゲノムバイオマーカーの検討:2

3.メルファラン・プレドニゾロン(MP)+ボルテゾミブ療法を受けられた多発性骨髄腫患者さんにおける臨床効果と副作用を予測するゲノムバイオマーカーの検討

メルファラン・プレドニゾロン(MP)+ボルテゾミブ療法を受けられた多発性骨髄腫患者さんにおける臨床効果と副作用を予測するゲノムバイオマーカーの検討

多発性骨髄腫は、Bリンパ球に由来する形質細胞ががん化した疾患です。最近、細胞内の蛋白質分解工場であるプロテアソームの働きを抑えるお薬であるボルテゾミブ(ベルケイド注)が高い効果を発揮することがわかってきました。そこで、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)と呼ばれる公的研究費から支援を受けた研究班において、多発性骨髄腫患者さんに対するMPB(メルファラン、プレドニゾロン、ボルテゾミブ)療法と呼ばれる治療法の有効性と安全性を調べて日本人に適した治療法を確立するための臨床研究を実施します。MPB療法は、骨髄腫患者さんの生存期間を延長させる効果のある素晴らしい治療法です。一方で、約2割の方では手足の痺れや痛みなどの末梢神経障害症状のために治療を中断せざるをえなくなってしまいます。また20〜50人に一人は、息苦しさや発熱を伴う間質性肺炎と呼ばれる薬剤性肺炎が現れて治療が継続できなくなることもあります。この研究では、MPB療法の治療効果とともに重篤な末梢神経障害や間質性肺炎などの副作用を予測できるような検査法を開発することが目的です。