名古屋市立大学大学院薬学研究科・薬学部English SAMPLE COMPANY
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時空間的な低酸素環境を誘導する光応答性酸素スカベンジャーの開発

 分子状酸素(O₂)は、好気性生物が酸化的リン酸化によってATPを産生するために不可欠であり、その欠乏は生命活動に重大な影響を及ぼします。慢性的な低酸素応答についてはHIFを中心とした分子機構がよく解明されていますが、急性低酸素の感知機構については未解明な点が多く残されています。これまで、低酸素環境を再現する方法として、低酸素チャンバーを塩化コバルト(CoCl₂)、デフェリオキサミン(DFOA)、グルコースオキシダーゼ/カタラーゼ(GOX/CAT)系などが利用されてきました。しかし、これらの手法は試料全体を低酸素状態に曝露する必要があることや、低酸素様シグナルを誘導するのみで実際の酸素濃度を低下させないなどの課題があります。そのため、細胞内の酸素濃度を時空間的に制御できる新たな技術の開発が求められていました。
 当研究室では、セレンまたはテルル原子を含むローダミン誘導体の性質に着目し、新規な光応答性酸素スカベンジャーを開発しました。本化合物は、可視光(560~590 nm)照射下で細胞内のグルタチオンと反応し、酸素を迅速に消費して局所的な低酸素環境を形成します。特に、SeR-BCMは高い時空間分解能で任意の細胞領域に低酸素環境を構築できることを実証しました。さらに、この手法を用いて、急性低酸素センサーであるTRPA1を発現したHEK293T細胞におけるCa²⁺流入を光照射によって制御できることを示し、本システムが急性低酸素応答の分子機構を解析するための有用な研究ツールとなることを明らかにしました。
(2017年度修士卒 小口さん、2019年度卒 伊藤君による研究)

[発表論文]
Angew. Chem. Int. Ed., 62, e202217585 (2023).

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