高効率なHNOドナーの開発

HNO (ニトロキシル) は、一酸化窒素 (nitric oxide : NO) が、一電子還元された化合物ですが、生物学的および薬理学的に重要な作用を持つと考えられている活性種の一つです。特に、心血管系に対してNOとは異なる独自の作用を示すことから、心不全治療への利用が 期待されています。

これまでに知られているHNOドナーの一つであるPiloty's acidは高アルカリ性でなければ、HNOを放出できないという欠点がありました。

私たちは、Piloty's acidの構造を変化させることによって、HNOの放出効率が変化することを見出し、中性条件下でPiloty's acidよりも効率よくHNOを発生する化合物を見出しました。
また、開発した化合物をクマリン型の光解除性保護基で保護することにより、可視光を照射した場合のみHNOを放出する化合物の開発にも成功しました。生細胞系における可視光照射依存的なHNO放出は本化合物によって初めて達成されました。

[発表論文］
Bioorg. Med. Chem. Lett., 23, 2340-2343 (2013)
Chem. Commun., 54, 10371-10374 (2018)