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研究室・行事レポート

No-013 野木森先輩の論文

[2018年11月/担当:宮原彰太]

野木森先輩の研究成果が英国科学誌Nucleic Acids Researchに掲載され、新聞各紙で報道されました。

外来性RNAが生体内に侵入した場合、このような異物を排除するため、生体はこれを生体内RNAと区別して分解除去する生体防御機構を備えていますが、この論文ではその分解機構の全容を解明しました。外来性RNAは翻訳によって外来性として識別され、翻訳効率の低い外来性RNA上でストールしたリボソームにRNA品質管理因子Dom34が会合し、これがRNA分解酵素RNase Lをリクルートすることによって外来性RNAは分解されます。また、mRNA医薬として用いる人工mRNAも、生体にとっては異物であり、同じ分解機構で分解されることを証明しました。これまで、mRNA医薬として用いる人工mRNAが生体内において不安定であることが、mRNA医薬の開発における最大の障壁となっていましたが、本論文では分解系を阻害剤等を使って抑えることでmRNA医薬を安定化できることをはじめて明らかにしました。今後、このmRNA医薬安定化技術を応用することで、遺伝子治療やがん免疫療法、iPS細胞の作製といった臨床応用が進展することが期待されます。