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研究内容

 生体は、核酸、タンパク質、脂質、糖鎖など様々な生体物質が複雑なシステムに組み込まれ、様々な生命機能を発揮しています。本研究室では、グライコームやプロテオームを中心としたオミクスアプローチを用いて、生体システムを構成する分子情報のネットワークを理解することを目指しています。また、こうしたネットワークを構成する生体分子の機能を、構造生物学、生化学、細胞生物学的手法などを駆使することで、分子レベルから細胞レベル、個体レベルに至るまで、統合的に理解することに取り組みます。

1. 糖鎖の構造解析を通じた生命の理解

 糖鎖はゲノムに直接コードされていないことから、糖鎖の構造を予測することや、発現を制御することは困難です。私たちは、糖鎖構造解析法を開発しつつ、分子構造に立脚したアプローチ法から、糖鎖が担う生命情報を解読することを目指しています。

 たとえば、真核生物と同様のゲノムサイズを有する巨大ウイルス、深海に存在する微生物、乾眠耐性を有するクマムシなど、極限環境に存在するような生物やウイルスにおける糖鎖の役割をその構造を調べることを基軸に進めています。

図:独自のグライコミクス解析法

2. 生命システムの中の糖鎖の機能解析

 糖鎖は細胞の表面を覆っており、ウイルスの感染やがんの浸潤・転移をはじめ、細胞の認識やコミュニケーションを媒介しています。このように糖鎖は“細胞の顔”として様々な生命現象に関与しており、医学・薬学分野においても注目されています。こうしたことから、生命現象において、糖鎖がマーカー分子として存在するだけでなく、積極的に生命プロセスにおいて積極的な制御していることが想定されます。本研究室では、がん化、分化、老化といった現象に着目し、分子レベルから細胞レベル、個体レベルにおける糖鎖の担う役割を明らかにすることを目指しています。またグライコーム加え、プロテオームなどのオミクスアプローチを取り入れ、複数のオミクス階層にまたがる情報ネットワークとして統合し、生体システム全体の理解を深めています。

図:神経幹細胞において、特異的な糖鎖が発現しており積極的に幹細胞性の維持に関わっていることを明らかにしている

3. 分泌経路における糖鎖修飾システムの理解

 小胞体において、タンパク質に糖鎖が修飾され、ゴルジ体で様々な糖鎖が形成されています。糖鎖の構造は、糖転移酵素と呼ばれる一連の膜タンパク質群が糖を次々に結合させることで形づくられます。最近の私達の研究により、糖転移酵素が、シス、メディアル、トランスといった従来知られているゴルジ槽構造のみで分離局在しているだけでなく、同じ槽であったとしてもより限局した領域に分かれて存在していること見出している。また、電子顕微鏡技術を駆使することで、従来、槽が単に積み重なっていると考えられていたゴルジ体が、実は複雑に連結した空間配置をもった構造体であったり、シスゴルジ槽がトランスゴルジ槽の外側に位置している様子など、従来では想定されていないゴルジ体像が捉えられてきています。こうしたことから、複雑なゴルジ体の中でいかに糖鎖が合成されているか、その仕組を明らかにすることを目指しています。

図:ゴルジ体の電子顕微鏡像(甲賀博士(旭川医科大より提供))

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