2-3) 恒川沙織
Clerkshipが始まるまでの3日間は、Health Science Campusの見学や、アメリカの薬学教育の歴史や現在の教育システムについての講義や、HIPPA Training(患者のプライバシーの保護に関する規約)と患者のモニタリングの方法についての講義を受けた。日本と共通する点も見られたが、異なる点が
多かった。
 アメリカでは、薬剤師になるには、一般に2〜4年の準教育課程を修了後、4年間の薬学教育を経て、免許を取得することができる。アメリカでは医療現場での実習に重点が置かれており、4年生の1年間は6ヶ所の病院や薬局で、各6週間ずつの実務実習が必修である。
 Clerkshipは5日間行われ、毎日違う場所へ見学に行った。
 1日目は、County Hospitalの近くのDrug Informationの見学をした。日本では病院のDI室は
主にその病院の情報を扱っているのに対して、アメリカのDI室は小さな診療所から大きな病院まで、地域を問わず、さまざまな問い合わせに対応していた。午後は高血圧患者の薬物治療についてDiscussionをした。
 2日目は、Ranche Los Amigoという、主に高齢者と糖尿病患者を扱っている病院の見学をした。
ここでは実際に血圧を測定する所を見学するだけではなく、体験することができた。また、入院患者と外来患者を扱う薬剤部が異なっていた。また、薬をpill boxという入れ物に1週間単位で朝・昼・夜・寝る前と分けていた。これは、日本でいう1包化であるが、日本みたいに分包機を使っていなかった。また、薬がPTP包装ではなく、プラスチックの入れ物に入っていることにも驚いた。
 3日目は、County HospitalのNutrition管理の見学をした。主にTPN患者の管理を行っていた。
毎日血中イオン濃度のモニタリングを行っていた。カルシウムイオンが正常値をオーバーしており、DoctorにTPNの組成の変更を提案していた。
 4日目は、Los Angeles Ambulatory Care Center という、退役軍人専門の病院の見学をした。他の病院と異なっているところは、ヘロイン中毒患者の治療に用いられるメサドンという薬の、投薬口が薬局とは異なる場所にあり、また、直接渡すのではなく、ガラス越しに、箱を用いて投薬していること
だった。
 5日目は、University Hospitalの見学をした。ここでは毎日のように心臓移植が行われ、40もの
手術室があり、高度な医療が行われていた。また、それぞれの階に薬局が備わっていた。午後は、手術後ICUに入る患者の管理の見学をした。抗生物質・TPNのモニタリングを行っていた。
 今回の研修では、さまざまな日本とアメリカの医療の違いを知った。日本では、誰もが平等に医療を受けることができるが、アメリカでは、個人の収入によって加入する保険が違うために、それぞれ行くことのできる病院が違うことに驚いた。また、薬剤部では、テクニシャンといわれる人が調剤を行っており、薬剤師は調剤を行っていなかった。また、医者や看護婦、栄養士などが自由にカルテに書き込むことができ、チーム医療が充実していると感じた。日本も、いよいよ来年から薬学教育が6年制となる。まだまだ日本では薬剤師=調剤という考えが根強く残っているが、これから徐々に変わっていくことが期待される。