2-9) 橋本雅子
 8月29日から9月14日までの約2週間、USC臨床薬学研修に参加した。はじめの3日間は二つのUSCのキャンパスやその周辺の施設を見学したり、アメリカの薬学教育についての講義やUSCの学生生活について聴いたりした。4日目からはUSCの4年次の学生とともに Clerkships に参加した。私は Health Science Campus のそばにある County Hospitalと Norris Cancer Hospital において研修を
行った。
County Hospital では nuclear pharmacy について学んだ。ここでは検査用ラジオアイソトープを扱っており、製造、搬入、保管、半減期を考慮しながらの払い出しなどを行っていた。日本ではnuclear pharmacy の概念はあまりなく、大きな病院では需要はあるがほとんどは医師が取り扱い、ラジオアイソトープを専門にする薬剤師を置く病院はほとんどない。ここでの薬剤師は直接患者と接する機会はないが、実際に検査を行っているところを見学した。日本の検査室は厚い扉で閉ざされているのに対して、ここは扉も開いていたりカーテンで仕切られていたりという程度であった。また、County Hospital の外来病棟にある薬局にも訪れた。County Hospital には低所得の患者が診察に訪れている。そのため比較的薬価の低い薬品がそろっていた。薬局にはテクニシャンといって調剤を専門に行う人が多くおり、薬剤師は調剤はせず処方箋監査や検薬といったところで専門性を発揮していた。
Norris Cancer Hospital では医師とともに回診を行った。小さな病院ではあるが、すべて癌患者で、告知も受けているそうだ。薬剤師は普段は医師と一緒に回診はしないということだった。ここでClerkshipを行っている学生はまず、患者の検査結果を書き取り、薬物治療が適正かどうか検討を行っていた。医師らは患者を訪問する前にそれぞれ担当する患者の前日からの様子を報告し、治療方針について話し合っていた。ここの病棟の薬局にもテクニシャンがおり、安全キャビネットで作業していた。USC の学生は回診の後、TDM 業務を行っていた。外来部門の薬局には入院とは別に、注射剤などを調整するところがあった。Norris Cancer Hospital は County Hospital とは異なり、明るく開放的であった。
アメリカの薬剤師は患者からの信頼が厚く、またその専門性を生かしてチーム医療に大きく貢献していた。薬学教育においても臨床実務実習に多くの時間が費やされており、学生の意識レベルも高かった。
今の日本の薬学教育や医療現場にないものが多くあり羨ましく思ったが、ここで得た経験をこれからの医療に生かし、患者から信頼される薬剤師になりたいと思った。