2-7) 鈴木賀央理
 日本とアメリカの薬剤師では、薬剤師自身の意識が大きく異なっていると感じた。彼らは医療における薬剤師の立場を理解し、自分の仕事に責任を持っている。日本では薬剤師の業務の多くが調剤にとられているが、アメリカでは調剤を専門に行うテクニシャンがいるので、薬剤師は薬物治療に専念することができる。薬剤師が必要である仕事とそうでない仕事の境界線をきちんと引くことで、薬の専門家としての能力を生かすことができている。この背景には薬学教育の違いがあげられる。アメリカの教育システムは医療現場での実習に重点を置いており、実習を通して学生は自分が目指す薬剤師というものを考えることができ、そのために自分が何をするべきかを学ぶことができる。
実際にClerkshipでは、USCの4年生の病院での実務研修に参加した。
Norris Cancer Hospitalは、がん治療の専門の私立病院で入院設備が整っており、より高度な治療を行っていた。医師や薬剤師、看護士などの医療スタッフは患者に対してオープンであるため、患者も自分の症状について、医療スタッフに話しやすい状況を作っていると思われる。薬剤部では調剤は専門のテクニシャンが行うので、薬剤師は患者のカルテを毎日チェックして、薬剤や投与方法、副作用、相互作用、モニタリングについて日本よりも多くの時間を割くことができ、専門的な目から他の医療スタッフや患者にアドバイスを行っていた。
Los Angels County Hospitalは群立の病院であり、循環器系の病棟を見学した。ここは患者のほとんどが低所得者であり、施設も古くまた、衛生面も良くない。Norris Cancer Hospitalとは対照的であった。日本では皆が平等に医療を受けられるという考えがあったので驚いたが、アメリカの医療保険制度が国民皆保険ではなく、個人の収入によって任意保険に加入するしくみになっているので、仕方がないことだった。しかしその中でも、薬剤師も医師の勉強会に参加するなど、実際の治療について学ぶ機会がありチーム医療は充実していたと思われる。
今回の研修では、アメリカの薬学について自分の目で確認することで、より深い認識が得られた。
また改めて日本の良い点、悪い点を考え直し医療に役立てるよいきっかけになった。