2-5) 進藤恵理
 clerkshipの最初の二日間はCounty Hospital(群立病院)のnuclear pharmacyの見学をした。nuclear pharmacyとは、放射性同位体を用いた検査薬のことである。心臓の働きや腫瘍の状態を確認する検査に利用されている。その階には病室があるわけではなく、検査室がありそこではテクニシャンが活躍していた。医師は最も効果のある検査をするために、半減期などを考慮して検査薬を調製していた。その際に被爆しないような措置がとられていたが、放射性物質の扱いに関しては日本の方が厳重であると感じた。患者の過去に用いた検査薬のデータが管理され、また室内の被爆量のチェックが定期的に行われていた。またその病院の薬剤部の見学もした。日本と異なるのは、薬剤師は薬のピッキングを一切せず、代わりにテクニシャンがピッキングを行い、薬剤師がその監査をするというように、分業がきちんと行われているということである。薬に関していえば、薬は商品名でなく一般名で出回っていて、低所得者のために無料で交付する薬も置いてあった。日本ではカプセルや錠剤などはPTP包装されているが、プラスチックのケースに入っているものが多かった。処方箋を受付で渡してから待合室で待っていてもいいし、数日後に電話で連絡してから受け取ることもできる。
次の三日間はNorris Cancer Hospitalの見学をした。ここは癌患者専門の病院で、入院患者と外来での治療との両方が行われている。1階は外来と薬局、2階は検査室、3・4階は入院患者の病棟であった。病室には種類があり、ICUと普通の病室、さらに免疫力がかなり低下している、患者は全体がガラス張りの病室に入っていた。5〜7階には実験室があって動物実験などを行っているようであった。ここでは主に医師が午前中に行う回診の見学をさせてもらった。それぞれの患者を診察する前に、その患者を主に担当する医師が中心となって、2・3人の医師たちの間で患者の病状や、治療についての話し合いがもたれていた。毎回全ての患者を診るわけではないが、少なくとも2・3日に1回は診察を行っているようであった。学生は患者のカルテを自由に見ることができる。カルテは医師・薬剤師・看護師がそれぞれの立場から書き込んでいるが、今までの治療の経過や患者の状態・検査値について詳細に書かれている。
学生はそれぞれの患者のデータをメモしていて、回診が終わった午後にそれらのデータをもとに、病気とその薬物療法について熱心に勉強したり、薬物の投与量に関する計算などをしていた。病室の外にはそれぞれの患者の臨床検査データが置いてあり、誰でも自由に見ることができる。またこの病院では抗癌剤の副作用のために髪の抜けてしまった患者のために売店でカツラを販売していた。
どちらの病院にも共通して言えることは、医師・薬剤師は白衣を着ているが、看護士やその他の技師の人たちが作業着を着ているということである。日本では女性の看護士はナース服というのが一般的であるが、作業着の方が体を動かすことの多い看護士にとっては合理的であると思った。また日本とアメリカでは薬剤師の立場が違うといわれているが、学生の病院実習の質と量を考えると、圧倒的に臨床的な知識を持っているので、分業がより進んでいるというのも納得できた。これから日本でも薬学部六年制が実施され、病院実習の充実化が図られることとなるが、それにより日本の医療もよりアメリカに近いものとなるのではないだろうか。