2-2) 岩塚麻由
 プログラムの前半では、まずUSC Main Campus Pharmacyの見学、またアメリカの薬学の歴史や薬剤師教育システムなどについて講義を受けた。薬局では、薬を処方するだけでなく、血圧、血糖値、骨密度のカウンセリングも行っており、患者に必要な情報を提供することで、健康をサポートするケアサービスがあった。また、薬局薬剤師と医師の連携も強く、地域医療に深く貢献していると感じた。
 後半は5日間のClerkship研修に参加した。アメリカの大学では、大学の学部を卒業後、薬学部に入学する。Clerkship研修では、Doctor of Pharmacy(Pharm.D)の4年生の行う実務研修を担当の4年生について見学した。
  5日間のうち、初めの2日間はCounty Hospitalの循環器科の見学に行った。ここでは
担当医師、医学部のインターンの学生、Pharm.Dの教授、Pharm.Dの4年生2人の10人からなる
チームで行うミーティング、回診を主に見学した。毎朝更新される各患者の経過について書かれたプリントが全員に配られ、循環器科であるため、患者の心電図をもとに病状、薬物投与について昼まで話し合われていた。薬剤師が毎朝医師とともに回診に参加し、半日かけて患者の症状を把握して治療方針について議論に加わるという光景は、私が4年生の時に行った病院実習では見たことがなかった。
また、Pharm.Dの学生は臨床薬剤師として活躍する教授からほぼ1対1の指導を受けていたが、このような指導を受けていく事で総合的な判断力が養われ、臨床現場で的確な情報を提供できる薬剤師が育成されるのだと思った。この点でアメリカの薬学部生と講義のみの基礎教育だけで卒業してしまう日本の薬学部生との間に大きな差を感じた。残りの3日間は、County HospitalのNuclear Pharmacyや入院患者、外来患者のための各薬剤部の見学に行った。Nuclear Pharmacyでは放射線検査薬の処方や管理について説明を受け、また実際の検査現場も見学することができた。薬剤部の見学で最も驚いたことは、調剤業務が薬剤師ではなくテクニシャンの仕事であるということである。薬剤師は最終監査を主な仕事としており、薬物治療の最終責任が薬剤師にあることが明確に感じられた。日本でもチーム医療が叫ばれているが、「薬剤師=調剤」のイメージがまだ強いと思われる。
これは、アメリカに比べ日本の薬剤師は薬学に対する知識が不足しており医療チームの中で信頼される地位をしっかりと確立できていないためではないかと感じた。
 今回の臨床研修を通して、薬剤師の役割について改めて考えさせられた。将来を考える上で大変貴重な体験ができ、充実した研修生活を送ることができたと思う。