1) はじめに <アメリカにおける医療の背景>
 近年、医療の高度化や社会の国際化に伴い、薬学や薬剤師を取り巻く社会的な環境は大きく変化しており、国内だけでなく国際的な視野に立った薬学教育の改革が求められている。今回、アメリカでの臨床薬学研修を通して直に感じた日本の医療制度や薬剤師制度との違いや問題点などを報告する。
 日本とアメリカにおける薬剤師制度には現在いくつかの大きな違いがある。その端的なものが薬学教育システムの違いである。日本における薬学教育が4年で修了するのに対してアメリカではそれ以上の時間をかけている。2-4年の薬学準教育の後に進学者選抜試験を受け、4年間の薬学専門過程に進む。この専門過程には長期間におよぶ臨床実習 (USCでは6週間毎6ケ所の医療施設で実習を行う。)が含まれている。臨床薬剤師になるためには専門過程終了後さらに1年間レジデンシーとして働く必要がある。この制度のおかげで薬学生は薬剤師としての高度な知識および技術を修得することができる。しかし、この反面多くの学費が必要となってしまったり、また Pharm.D取得学生のほとんどが実務薬剤師になってしまうなど進路が制限されるといったデメリットもある。
 日本にとってアメリカの薬学・薬剤師制度には見習うべき点が数多くあるように思われる。しかし、その全てを真似しようというのではなく、アメリカのシステムのメリットとデメリットを十分に認識し、日本に適したシステムを作っていくことが重要であると考える。