2-4) 土屋智奈津
USC Hospital
 3日間あったClerkshipのうち2日間USC Hospitalの肝臓移植患者が入院する病棟に行った。研修の内容としてはLevel4の学生とともに病棟を回った。まず朝一番初めに患者のその日投与される薬剤を患者のファイルから書き写す。このファイルはカルテや看護記録、薬暦簿などを一つにしたようなものであり医師看護師、薬剤師など医療従事者が誰でもいつでも見られるようになっている。日本ではカルテは医師のものであり、看護記録は看護師のものであり、薬暦簿は薬剤師のものである。それらを見ることは今でこそ可能になったが、やはりお互いのフィールドを越えるような事は避ける傾向にある。
 しかしUSCHospitalではそのような雰囲気はなく、合理的に患者の情報が医療従事者に供給されるようになっている。ファイルを見て必要な情報を得た後に、Level4の学生はその投与される薬剤やその投与方法などの検討を行い、その処方にどのような意図があるのかを研究していた。昼前頃の時間になると担当医、医学部のインターンの学生、看護婦長、そしてLevel 4の学生とで患者の回診に行った。患者はほぼ全て個室に入っており、その部屋を一人づつ回る。時折担当医が患者の薬剤についてLevel 4の学生に質問する事があったが、Pharm.D.とは異なるので積極的に医師らに意見するという場面を見ることはできなかった。Pharm.D.は朝一番の医師らとのディスカッションや薬剤師としての回診に行くため私たちがClerkshipを始める時間にはすでに病棟に上がってしまっていた。私は患者とコミュニケーションをとっている場面や、医師との対等なディスカッションを見たかったという思いがあったのでみられなかったのは残念であった。

County Hospital
 最後の一日はUSCHospitalに隣接して存在するCounty Hospital(群立病院)のICU見学に
行った。この日もまたLevel4の学生が病棟を案内したり、担当している患者について説明をしてくれた。County Hospitalに入院している患者のほとんどが低所得者であり、診察料などはほとんどお金がかからないという事であった。ロサンゼルスのCounty Hospital は大変古い施設であった。ICUということで
あったのでもちろん手術後や重病患者が入院しており15人の患者がTPN(高カロリー輸液)を行っていた。しかしながら設備も最新では無く、低所得者が多いというのもあってかICUにもかかわらず日本のような衛生管理は行われおらず、誰でもそのままの状態で入ることが可能であった。また病室も多くは5人もしくはそれ以上の大部屋であった事にも大変驚いた。Level4の学生はまず病棟に向かうと患者の今日のTPN情報をパソコンから得てその情報を書き写し、患者のファイルから他に投与された薬剤や患者の今日の容態などをチェックした。私を案内してくれたLevel4の学生の担当患者はパソコンからいくらアクセスしても今日のTPNの情報を得られないといってカルテを見たところ朝一で緊急にインシュリンが投与されている事が分かった。患者を見に病室に行ったが患者はいなかったので、担当の医師に聞いたところ今朝容態が急変し亡くなったとの事であった。午後から行われたPharm. D.と管理栄養士、看護婦長、そしてLevel4の学生とのディスカッションでその事は報告された。担当していたLevel4の学生に患者との別れはつらくないのかと聞いたところ、日に日に容態が悪くなるのを見ていたのでこのような結果も予想できたしさほどショックではないといったのには少々驚いた。ディスカッションでは管理栄養士が積極的に発言していた。日本でIVHやTPNのことを議論する際に管理栄養士があのように発言したりするのを私は病院実習の際に見るとはできなかったので日本との差を感じた。前日まで行ったいたUSC Hospitalとの衛生管理状態や設備などがあまりに違っていたので同じ病院とは思えなかった。低所得者、高所得者によって受けられる医療の質の差に日本とは異なる医療制度であるということを感じた。