2-3) 世古 隆
 私はCountyでclerkshipを体験しました。アメリカには日本のような国民皆保険の制度がありません。保険に入れない低所得者層を保護する最低限の保険はありますが大抵は所得に応じて民間の保険会社に加入することになります。Countyというのは低所得者層の人達の病院になります。私はまず感染症の病棟に行くことになりました。病院に入って見ると患者のカルテのようなものが各階の受け付けのところにおいてありました。誰でも閲覧できるようになっており、医師、薬剤師、看護師それぞれが担当して記入するところがありました。
 私達は病院実習を行っているUSCの4年生の人達と行動をともにしました。4年生といっても、彼等は薬学部に入る前にcollegeを卒業しているので、実質8年生くらいになります。午前中は担当している患者の臨床検査値や投与されている薬物のチェックをしていました。 彼等にはある程度の知識はもちろんありますが、検査値はコンピュータでも管理されており、検査値の値が低いと数字の前にL(low)、高いとH(High)が表示されるようになっていました。またアメリカではPDAが広く普及していて、薬物の相互作用などが簡単に調べられるようになっており、ものすごく便利だと感じました。さらにこれは薬局での話ではありますが、調剤においても日本のように棚から薬をかき集めてくるのではなく、処方箋に書かれている薬をバーコートで認識させその薬が自動的に出てくるようになっていて調剤の正確さ、時間の短縮に大きくコンピュータが寄与していることがわかりました。午後は4年生が午前中に仕入れた情報に関するdiscussionと感染症で使われる薬についての勉強をしていきました。私はTPNが実施されている患者の病棟での実習も受けました。午前中は、やはり臨床値のチェックをやっていました。TPNには数種類あり臨床値を見て決定されていました。午後は患者の体重、年齢などから患者に必要なカロリーを計算して輸液が何パック必要かというようなことをdiscussionしていました。私はclerkshipを体験してみてアメリカの薬学の教育はより実践的であり薬学部を卒業したら即薬剤師として働いていけるように感じました。私は既に薬剤師ですが、USCの学生の方がはるかに臨床的な知識が豊富で薬剤師っぽいと思いました。このことは教育の仕方、しいては薬学部の存在意義の違いに起因していると思います。日本の薬学部で勉強する内容は有機化学や物理化学などbasic scienceがメインで臨床的なことはあまり勉強しません。また、アメリカでは薬学部を卒業するとほぼ100%薬剤師として働くようです。一方で日本では必ずしも薬学部を卒業したからといって薬剤師として働くとは限りません。逆にアメリカ人から言うと、なんで薬学部出て研究者になるんだ!という感じみたいです。
 薬学部の6年制がいよいよ迫っています。ただ2年間教育期間を延ばすのではなく即戦力となるような薬剤師の人材育成に大学が貢献できていけるようになればよいと思います。