2-7) Rancho Los Amigos National Rehabilitation Center
 病院の中に薬剤師が直接患者と面談して、循環器系の薬(ワルファリンなど)の投与量投与法を決定し、それについて患者に説明する、Clinicと呼ばれる場所があった。日本にはない概念だったので、最初理解するのにてまどった。そこでは医師は特におらず(インターンの医師はいた)薬剤師がとりしきっていた。予め患者の血液検査を行い、その結果と患者の状態から、薬物の血中濃度を一定保つための投与量と投与法を薬剤師が決定し、薬剤師がそれについて患者に説明していた。また、薬学部の学生もそれをすることができた。ここは病院のなかの診療科のひとつのような感じで、日本では医師がやるようなことを薬剤師がやっていた。薬剤師の地位が高いのもうなずける光景だった。ここは診療所と病院のある施設で私は外来の患者の訪れるClinicの見学をした。診察室は個室になっており、8部屋ほど集まっていた。待合室や受付は1か所でカルテも1か所に集められており、患者を診察する際に持ち出していた。診察室の入り口に今日診察を担当する医師、薬剤師の名前が書かれていた。このような診療所では主に高血圧や糖尿病などの慢性疾患の患者に対する治療(Ambulatory Care)を行っている。薬剤師はまず、診察に訪れた患者のカルテ、検査値、服用している薬をみて、その患者の疾患、病状を把握し患者に対して何を聞くべきかを判断する。私が見学させてもらったのはメキシコから来た糖尿病の患者であり英語が話せないので通訳として娘と共に来ていた。また薬剤師もメキシコに6週間研修に行っていた方が通訳していた。ロサンゼルスはメキシコと近いためこのような患者も多いそうである。また他の医師は症状を表すときに使うスペイン語のプリントを白衣のポケットに入れて持ち歩いていた。患者とコミュニケーションをとるには分かる言葉で正確に伝えることが大切であると改めて感じた。薬剤師は患者の薬の減り具合や会話からコンプライアンスはよいか、副作用は現れていないかを判断しさらに日常の食生活、運動習慣についても聞き取りをしていた。診察が終わると服用中の薬の種類や量、血糖値の管理について改めて検討したり、臨床検査技師に血液検査などの測定を依頼していた。最終的にこの患者はインスリンの
ユニット数を増やすことになったのだが、これを薬剤師から医師に伝え文書により了解を得ていた。日本では薬剤師はまだ医師の決定した処方に対して、意見を述べるという関係が一般的である。アメリカでは薬剤師と医師が医療チームの一員としてお互いの立場から対等に患者に接しているのだと感じた。また日本で患者の診察を行うのは医師のみであるので、アメリカのように薬剤師も積極的に患者と接して薬剤師の視点からよりその患者に合った薬を選択していくことによってさらに医療に貢献していくことができると感じた。