2-6) Norris Comprehensive Cancer Center and Hospital
 Norris Comprehensive Cancer Center and Hospitalは、60床ほどの規模の病院である。
ここでは、主に外来患者用の薬局を見学した。この薬局で調剤する薬のほとんどは化学療法剤とのことであった。日本では外来患者に対して化学療法を行う例はまだ少なく、化学療法を行う場合には患者の入院が一般的であるが、アメリカでは入院費用が高いこともあり、深刻な症状の患者を除いて外来患者が化学療法を受ける方が一般的とのことだった。たとえ入院しても、1週間以内の短い期間で退院することが多いそうだ。外来患者の中には自分で車を運転して病院まで来る患者もいるそうだ。外来患者用の薬局は建物の1階にあり、カウンターのある部屋の奥に調剤室があった。薬剤師はほとんどカウンターのところにおり、調剤室では資格を持つテクニシャンと呼ばれる人たちが化学療法剤の調剤に当たっていた。
もちろん薬剤師も調剤できるが、実際に調剤することはあまりなく、テクニシャンの調剤した薬の監査を
行っていた。カウンターの後ろの調剤棚には化学療法剤以外の薬もあり、副作用である便秘の薬や検査用薬なども置かれていた。カウンターの向こうには看護婦の待機する部屋があり、調剤された化学療法剤が薬剤師から手渡され、患者に投与されていた。患者は容態によって椅子に座って、あるいはベッドで化学療法を受けていた。薬局の見学の後、病棟を簡単に見学した。入院患者はかなり深刻な症状の患者、とのことだった。学生に、アメリカでの癌の告知について尋ねたところ、すべてが患者に話される、とのことだった。癌という病気は何も悪いことではない、医師や薬剤師は患者に対してすべての情報を伝える義務がある、という考えに基づいているそうだ。すべてを伝え、患者とともに病気と闘う必要があるから、という言葉が印象的だった。