C. V.A. Hospital (Veterans’ Administration Hospital)
アメリカにおける医療の風景  この病院は退役軍人のための病院でありほとんどが国からの補助を受けており、無料もしくはごく安い料金で医療を提供している。患者さんの平均年齢は高く、9割以上は男性である。今回USCの学生の1人がこの病院で6週間の実務研修を行っていたので、それに同伴させてもらい薬剤師の活動を見学した。まず、病棟の1階にある薬剤師の部屋へ行き、そこでUSCの学生が説明を受けている間私たちは別の部屋で待っていた。部屋は実習に来たUSCの学生が自由に
使ってよい部屋のようであった。カレンダーをみると毎週月曜から金曜まで何らかの勉強会があり、特に目をひいたのはAnticoagulation(抗凝固剤)とRheumatology(リューマチ学)である。Anticoagulationでは患者から採取した血液を検査しその検査結果をもとにこの血液が凝固しやすいかどうかを話し合うそうだ。この1階の薬剤師の部屋はGOLDという受付の奥にあった。それとは別にSILVERという受付も
あった。このことをUSCの学生に聞いたが知らないようであった。次に外来患者が薬を受け取るoutpatient pharmacyを見学させてもらった。ここでは1日1000枚の処方箋を扱うそうだ。
テクニシャン、薬剤師合わせて12,3人はいたと思う。患者に服薬指導する場所と調剤を行う場所は隔離されており、調剤する場所から鍵がかかっており外から開けられないようになっていた。
中は広く薬の棚や高度な自動分包器(写真参照)、監査台が所狭しとならんでいた。この空間では音楽がかけられ、ケーキやピザも自由に食べていた。衛生的に大丈夫なのかと疑問に思ったが、散剤は扱わないのでいいのだろう。写真を撮ってもいいかと聞いたら快諾してくれた。音楽を聴きながら働いたり、勤務中にもかかわらず大変陽気で圧倒されてしまった。私たちの要望で病棟見学をした。そこを希望したわけではないが精神病棟を見せてもらった。2〜3人の部屋で病棟内は自由に出歩けるのだが、外へは鍵がかかっており出られないようになっていた。
アメリカにおける医療の風景  日本の病院では考えられないことだと思うのだが、この病院には図書館や教会があった。一般患者が使用できるかはわからないが、なかなかの広さであった。この病院は疾患別で病棟が分かれており、その病棟毎に薬剤師が外来患者の面談用に個室が設けられていた。私たちが今回行ったのは気管支喘息の病棟で、何人かの患者が服薬指導を受けに来ていた。薬剤師はまず患者の名前、生年月日を聞き
コンピューターからその人の個人情報を引き出してから症状や薬歴を聞き現在の薬について判断しそのままでよいなら患者が使用するインヘラー(吸入器)の使い方を指導し、変更の必要があるなら医師に電話しその旨を伝えていた。USCの学生と私たちの3人でその個室へ行ったのだが、USCの学生は実習なので2人目の患者にはインヘラーの使い方を説明するよう薬剤師から指導されていた。こういう実践によって薬剤師は育つのだと感じた。アメリカでは医師の次に薬剤師がいる。医者が診断して処方箋を出し次に薬剤師の所にきて相互作用や副作用の危険がないかを確認した後、投薬に関しての注意点を患者に説明する。専門医が存在するように専門薬剤師がアメリカでは存在するのである。現在日本の医薬品の数は約15000種を超えており、医師が医薬品のすべてを理解し、特定疾患に対し最適の治療薬を 的確に選び使用することはきわめて困難な状況になっている。わが国では過去にサリドマイド事件、スモン事件、ソリブジン事件、血液製剤によるHIV感染など薬剤投与に関連した疾患の発生が相次いだ。そして現在、増大する医薬品情報管理の役割をはたすことが薬剤師に強く求められている。薬剤師に求められるDI活動には正確性と同時に迅速性が要求される。現代ではそれに対応するためにコンピューターを効果的に運用することが肝要となってきた。また、日頃から医薬品情報を検索できるような体制を整えておくことも必要である。