2-5) V.A. temple
 VAとは、Veterans’ Administration Hospitalの略であり、退役軍人のための病院である。
ほとんどが国からの補助を受けていて、無料もしくはごく安い料金での医療を提供している。患者さんの平均年齢層は高く、9割以上は男性である。今回、そのVAでの薬剤師の活動を見学した。この日は生活習慣病 (糖尿病 )患者の面談を見せて頂いた。朝、USCの学生と病院の薬剤師さんに連れられたのは小さな部屋。ここで外来患者と面談するという。
薬剤師さんが患者の名前を呼ぶと患者がやってきた。この患者は糖尿病を患っていた。薬剤師は服薬状況、最近の食事のメニューなどを聞き出す。そして血糖値、血圧を測定し、記録。この時の血糖値は空腹時のもので、患者は朝食をとらずにやってくるらしい(朝7時に起きて9時頃面談するので、お腹が
すいてしまい朝食をとってしまう人もいる)。また、朝にコーヒーを飲んでいないか確かめた上で血圧を測定していた。(カフェインは血圧を上げるため)
  最後に生活上の注意点等を患者に確認し、面談は終了した。その後、薬剤師は患者の検査値をコンピュータに打ち込んだり、薬剤師同士で治療方針についてのミーティングを行ったりしていた。患者は2週間に一度来院し、血糖値、血圧は来院時には必ず測定するらしい。その結果から薬剤の投与量を増減するようである。Refillは行われないのかどうかはわからなかった。おそらく、Refillが施されるのは自分で血糖値のコントロールがきちんとできると認められた患者さんであると思われる。驚いたのは薬剤師が外来患者との面談用に個室が設けられていることであった。
そこで外来患者と面談し、検査の結果から投与量の調節をすることであった。これらの事は日本では医者が行っていることである。また、患者さんの基礎情報(住所や兵役内容、予防接種歴、アレルギーを起こす薬の名前など)医師のカルテ、看護婦の記録、検査のオーダーとその結果、X線やCTの写真、薬の処方等、患者さんに関わる情報管理はすべてコンピュータの端末を通じて行なわれている。アメリカの薬剤師は薬物療法においてほぼすべての責任を負い (処方権はない )、外来患者と接する事が多いので人々から病院薬剤師が何をしているか、わかりやすいし信頼されている。その点は、とてもうらやましく
思った。また、患者に関する情報がコンピュータで管理されているのは大変有用であると感じた(電子診療録は日本でも導入されてきている )。薬物治療において今回見学した面談は、外来患者に処方された薬剤における薬効の評価、副作用の有無をモニターする上で大きな利点となる。
また、将来アメリカのように患者の入院日数が短くなった場合には薬剤師による外来患者のケアは必要になってくると感じた。
VAは他にもう一つ見学した。そこでも外来の患者さんと面談しているところを見せて頂いた。このVAは大きな病院らしく、薬剤師が患者と面談する部屋はいくつもあって、その部屋ごとに名前がつけられていた。疾患はさまざまであり、患者との面談後、投与量の変更等が検討されていた。