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特別講義紹介 2017.1.17.

 今年度の特別講義にはドリアン助川さんを招き、「ハンセン病問題と生きることの意味~私はなぜ小説『あん』を書いたのか?」というタイトルで話をしてもらいました。
 この講義は薬学・医学の負の面を取り上げること、また、一流の話を聞いてもらうことを目的に、毎年企画して4回目になります。今年度は、昨年の相模原市の障害者施設やまゆり園での殺傷事件にショックを受け、医療系に進む子が多い薬学部の学生に、障害者や病者などの社会的弱者の「生きる価値や意味」について考えてもらうため、助川君にお願いしました。実は、助川君は、私(粂)の東海高校の同級生で、彼自身さまざまな苦労をしながら、ハンセン病を題材に生きる意味を問いかける「あん」という素晴らしい作品を書き上げ、映画化しました。構想から15年以上の年月をかけ、さらに10回以上もプロットを書き直した作品です。
 講義はカンヌ映画祭でオープニングを飾った時の出演者たちの華やかな映像や、助川君のユニークな人生の楽しい話を交えながらも、施設から出ることを許されず、子どもを持つことも、好きな職につくことも禁じられ、らい予防法がなくなった後も、非科学的な差別に苦しみながら、それでも自分の生きる意味を見出していく元ハンセン病患者の主人公(徳江さん)の考え方を紹介し、それを哲学的に解説しました。その結果、最後に紹介された「単独で存在しうるものはない。すべては関係性の中にある。分断と虚無(=関係性を断つことは無につながる)。」という言葉が、聴講した多くの人の胸にすとんと落ちたと思います。
 私は異なる契機と方向から生きる意味を学んできて、その中で好きになった哲学者の河野哲也先生の「自分探しをし過ぎてはいけない。そこは空っぽだから。」という言葉を学生によく紹介します。つきつめると、やっぱり同じような結論になると感じました。以下は、翌日の中日新聞の報道ですが、取材した記者も感銘を受けたそうです。

中日新聞記事

助川君のブログ→ドリアン助川 道化師の歌

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