Greeting教授からのご挨拶

教務方針2020:薬学部専門教育を開始するにあたって
2020年4月20日 名古屋市立大学薬学部教務委員長 粂 和彦

 遅くなりましたが、講義を始める準備が整った今日、教務委員長としての考えを伝えます。3月以来、新型コロナウィルス感染症の状況が日々変わる中で、根本的に方針を変えると決めたのは3月20日でした。次に、そのための方策を全て自身の責任で実行すると決心したのが4月1日で、以後、ほぼ一人で方針を決めて進めました。ですから、今学期の教務方針についての全責任は私にあります。何らかの不満や意見があれば、私に直接送って下さい。
 この災害時に専門教育(座学講義・基礎実習・卒業研究実習など)を行う責任者として、以下を目指しました。
   1. 例年の水準に劣らないレベルの教育を提供すること。
   2. 学内での感染拡大を最大限予防する対策を講じること。
 両者は時に相反しますが、オンライン講義の環境さえ整えれば、座学講義は1と2を両立できると考えました。一方、基礎実習は100名が密集し、オンライン化が難しく、両立が最も困難です。そこで3月に決めた最大の目標は、3年生の実習の完遂です。そのため、2年生、4年生の諸君には本当に申し訳ないですが、実習を最優先するため、前期全部を原則オンライン講義で行うことを4月1日に決めました。当時は文科省の規則で全面的なオンライン講義は認められないと指示されていましたが、様々な外部情報から容認される可能性が高いと予測し、また、認められない場合は通常対面講義に戻す変更の方が容易と考え、最初から全面オンライン化を目指しました。最短で環境を整備するため、学生一人一人と個別に連絡できる体制を作るため、これも当時は認められていなかったLINEグループの構築も始めました(今は逆にLINE連絡網を作ることが推奨されています)。そして、講義の質を落とさないため、板書で行う講義は板書で行ってリアルタイム配信できる環境も整備し、資料も電子媒体だけでなく、紙媒体も郵送しました。(私が郵便局にレターパックを買いに行き、袋詰めもしました。)現時点で全面的にリアルタイム動画講義を提供予定の大学は少なく、機材は寄せ集めの中古ですが、どこにもひけを取らないシステムと考えています。このように、できる限りの環境は整えたつもりですが、まだ不安もあります。どうか、多少の不自由やネット関連の出費は容認して頂きたく思います。また、クラスターを作らない努力を全力で行っています。不要不急の目的で感染確率を高める行動をとらないことを強く要望します。君たちの多くは、将来、医療にかかわる職場で働きます。医療崩壊を他人事と思わないで下さい。
 準備はしましたが、実習ができるかどうかは、現時点でも全く不明です。緊急事態宣言が延長されれば、再延期が必要です。ただ、その場合には、5月以後は午後にも講義を行って、全日を実習に充てるなど、最大の調整を行い、悪い方向の想定でも何とか前期の実習を実現したいと考えて、次の対策の策定に入っています。
 リスクアセスメントは以下です。2年生、4年生に自宅学習をお願いすることで登校は約100名で、実習室や時間帯をわけ、半数以下の小グループにします。これは高校と同レベルで、厳しく感染予防を行い、たとえ学生1名が外部で感染したとしても、他の学生に広げることをできる限り防ぎ、クラスター拡大化を予防します。100%安全ではありませんが、科学的に考えて、感染確率が、通常の社会生活よりも有意に高くならないように行います。高校が再開されるレベルに社会がなっていれば、登校は容認されると考えます。
 また、4月に入学した新入生は大半が教養教育で私の守備範囲外が多く行き届いていませんが、入学時のガイダンスを限られた時間で効率的に行い、チューターとのオンラインネットワークを作り、少なくとも専門教育は通常通り提供する準備を整えました。専門教育が軌道に乗れば、今後は教養教育も支援したいと考えています。今年の入学生は本当に不運ですが、少しでも良く学べる環境を整えます。
 状況が好転した際は、2年生、4年生にも、対面講義も行いたいです。ただし、この場合、最も感染リスクが高いのは食堂です。全国で発生したクラスターの多数が飲食を伴う場所からでした。院内感染でも食事を介したものがあります。そこで、3学年300人以上が同時に昼休みに入ることがないよう、時差をつけた時間割とする予定です。たとえば、3年生は、午前中の講義はオンラインのままとし、午後の実習のみ登校、その他の学年は午前のみを対面講義とし、午後はオンラインとするなどの方法です。いずれにせよ、みなさんには不自由な時間割を強いることになりますし、予定も変わることがありますが、教育の質と安全の両者の担保の目的で行うことであると理解と協力を求めます。それでは、オンラインではありますが、今年度の講義を楽しく学んでくれることを期待します。

 最後に、ここまで強引に進めてきましたし、お願いしたことを、すぐに変更したことも多々あり、周囲のみなさまには、大きなご迷惑おかけしました。今後も多大な負担を強いることになるため、まだ謝辞をまとめられる段階ではありませんが、ここまで支えて下さった先生方、特に大学院講義にも大きな影響があるのに、何の文句も言わないで協調して進めて頂いた中川先生、オンライン講義準備を実践して下さった牧野先生と佐藤先生、私の「スピード違反」を検挙せず見守って頂いた林学部長、急な依頼に息を切らして夜中まで大量のプリントを印刷して頂いた多くの先生方、事務室では、メールがパンクするほど仕事を押し付けたのに笑ってやり過ごしてくれた浅井さんや佐々木さん、4月異動で、ご挨拶もまだなのに深夜までZoomのセットアップを手伝って頂いた小島さんなど多くの方々、いろいろ手伝ってくれたボランティアの学生諸君と研究室メンバーに深く感謝いたします。また、こちらにかかりっきりで、私が3週間も放置してしまった多くの部門(研究室、共同研究先、学会、査読、診療準備などなどなど)に関与された方には、大きな負担をおかけしたことを謝罪いたします。この何ともしがたい状況を、今後、何とか乗り切りたいと思います。

名古屋市立大学大学院
薬学研究科・薬学部
神経薬理学分野

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